12月14日(木)、群馬県庁記者クラブ(刀水クラブ)において、澁谷正史学長が「妊娠高血圧症候群診断薬に関する特許申請」について記者発表を行ないました。詳細については以下です。
平成29年12月14日
各位
学校法人 学文館 上武大学
妊娠高血圧症候群診断薬に関する特許申請についてのお知らせ(案)
学校法人 学文館 上武大学(学長:澁谷正史、以下「上武大学」)は、この度、血管内皮増殖因子由来マーカーsFlt-1を用いた妊娠高血圧症候群の診断薬に関してsFlt-1新規測定法の開発に成功し、特許申請しましたのでお知らせいたします。
妊娠高血圧症候群(Pregnancy-induced hypertension ; PIH、以前は妊娠中毒症と呼称)は、妊婦の5%程度に見られる高血圧を主徴とする疾患ですが、胎児の発育不全や早産、流産の原因となり、場合によっては子癇※1など母体の重篤な疾患を引き起こします。従って、産科における主要な疾患の1つとなっており、少子化の現代において、母子共に健康な出産を迎える上で、克服すべき喫緊の課題として世界的に認識されています。
妊娠高血圧症の治療では、食事療法や降圧剤などの対症療法が一般的ですが、早期の診断により、早めの予防措置や十分な注意を払うことで重症化を予防することが重要とされています。
これまでの国内外の研究者や澁谷学長による一連のPIHの発症機構に関する研究により、妊娠時に血管内皮細胞増殖因子(VEGF※2)や胎盤増殖因子(PlGF※3)のレセプターFlt-1の一部が遊離した分子(sFlt-1※4タンパク)の異常発現がPIHの原因と重篤化に関与していることが明らかになっています。更に、妊婦血中のsFlt-1濃度を測定することにより、高血圧などのPIH臨床症状が発生する前に発症を予測できることが報告されています。しかし、現在の測定法は時間や経費がかかり、単純化した新規測定法が求められていました。
今回、本学医学生理学研究所(澁谷正史所長)では、単純化・短時間で安価な測定法の開発に成功し、特許申請いたしました。さらに、東京大学付属病院(産婦人科)と共同研究契約のもとで妊娠高血圧症候群患者血清の測定を行い、新規測定法が血清中sFlt-1異常発現を検出することを確認しています。
現時点では妊娠高血圧症の有用な治療法は開発されていませんが、広く利用可能なsFlt-1測定法は、本疾患を克服していく上で重要な手掛かりを得るのに役立つと期待されます。
今後、sFlt-1を用いた妊娠高血圧症候群診断薬の実用化に向けて、さらに産学連携を進めてまいります。
以 上

※1:子癇
妊娠、分娩、産褥期に起こす意識喪失とけいれん発作。妊娠高血圧症の人に子癇発作の前触れがみられたときは、早急に母児双方とも治療のできる病院に入院する必要がある。発作を繰り返し、深い昏睡状態や呼吸困難が続くと、胎児だけでなく、母体にとっても非常に危険な状態となる。
※2:VEGF
vascular endothelial growth factor。血管内皮細胞増殖因子で血管内皮細胞表面の受容体(VEGF Receptor Flt-1や、KDR)と結合することにより血管内皮細胞を増殖させ血管形成を促す。
※3:PlGF
placental growth factor胎盤増殖因子。VEGFファミリーの一つ。胎盤の形成を促す。
※4:sFlt-1
soluble fms-like tyrosine kinase-1。VEGF受容体1(VEGFR1/Flt-1)の一部が遊離したもの。
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