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近年、我が国を含む世界の多くの国々では少子化・高齢化社会となり、がんや糖尿病などの生活習慣病の克服が急務となっています。一方、ヒトゲノムの解読も完了し、我々の細胞染色体には3万弱の遺伝子が存在してさまざまな機能を果たしていることが明らかとなってきました。
学文館では上武大学・ビジネス情報学部にスポーツマネジメント学科を、大学院にはスポーツ健康マネジメントコースを設け、これまでも生理学的な領域での教育・研究に取り組んできました。さらに、平成16年には看護学部も発足し、病気に苦しむ患者さんのため、より良い看護を目指して教育・研究に力を入れています。
これらをさらに充実し、より質の高い大学教育・研究を目指して、平成24年1月1日(実質的には4月1日)に学文館医学生理学研究所を発足させました(平成25年4月1日に大学付属研究所へ変更されています)。内容的には、がん遺伝子の作用機構や、所長の私が東京大学医科学研究所、および東京医科歯科大学において長年研究を進めてきた血管新生を制御するための分子機構(主には血管内皮増殖因子Vascular endothelial growth factor, VEGFとその受容体)を中心に研究を進めたいと考えています。VEGF受容体の最初の遺伝子は1990年に私どもの研究グループが見出し、他の受容体との構造的類似性からFlt-1と命名して世界に報告したものですが、この受容体ファミリーは多くの固形がんにおいて、がんの増殖や他の臓器への転移を促進する“腫瘍血管”新生に関わることが明らかとなってきました。
一方、このFlt-1遺伝子は、がん以外の病気とも密接な関係があることが解ってきています。特に、以前の呼び方で“妊娠中毒症”、現在では“妊娠高血圧症候群”として広く知られる産科で非常に重大な病気について、Flt-1遺伝子の一部が深く関与することが見出されました。これらの点から、医学生理学研究所においては当面のテーマとして、まだ良い治療法が開発されず、血管とも関係の深いがんの1種である“脳腫瘍”と、Flt-1が密接に関係する“妊娠高血圧症候群”を具体的な研究対象としつつ、神経変性疾患など加齢と深く関わる病気も視野に入れながら研究を進めたいと考えています。これらのテーマに関心をお持ちの研究者や学生諸君、また企業の方などには、是非、研究所にご連絡いただき、解決へ向けてのアイディアを話し合っていただければありがたく思います。また、群馬県にお住まいの多くの方々にご支援・ご鞭撻を賜れば大変幸いです。
(2016年4月) |